決定的に重要な事務量の把握

業務マネジメントに関連して、事務量の把握についてのお話をしたいと思います。

ホワイトカラーのオフィス業務でみると、昨今ではITC関連の経費が増加しつつありますが、それでもなお人件費が大きなかたまりとなっていることに変わりありません。
このため、この人件費をどう分解するかが悩みのタネとなります。以前に述べました業務の5化(ごばけ)などを考えるに当たっても、人件費を分解し、どこを集中的に考えるか、優先順位を決めることが求められます。すなわち、人件費が分解できないと、業務の5化もポイントがわからないことになりかねないのです。

人件費を分解するにあたっては、事務ごとに投下した時間、使った時間を測る、事務量の把握を行うことが効果的です。

これは、企業においても伝統的に大きな課題でした。増大しつつあった間接費(人件費がかなりの部分を占めます)について、いかに正確に配賦するかといった観点から、業務をいくつかの活動に分けてコストを配賦する、活動基準原価計算(ABC)が注目されたこともありました。そこでも従業員の活動をいかに把握するかという課題が残されていました。
もちろん、最近発展の著しいデジタルの活用はその1つの答えとなるでしょう。例えば、旅館等のサービス業において、従業員の位置情報を把握することにより、その動きを把握することが可能です。その上で非付加価値活動の時間を削減して付加価値活動の時間をいかに増やすといった事例研究を何年か前の学会で聞いた記憶があります。これなどはDXといえるかどうかはともかく、デジタルの活用の文脈で考えることができるでしょう。

とはいえ、話を難しくするだけが能ではありません。

能率や効率性・効果性の向上といった文脈においては、必要な範囲で会計数値に置き換え、デジタルを活用することで足りるでしょう。しかし、そこまでする必要がないのであれば、そもそも会計数値への置き換えなどは考えなくていい、という割り切りは重要だと思います。重要なのは、コストを正確に把握することではなく、業務を改善してコストを削減することだからです。

事務量の把握が重要であることは述べました。それでは、行政組織の場合、事務量の把握についてはどう考えればいいのでしょうか。そもそも、行政組織において事務量の把握は可能なのでしょうか。

実は約30万人の国家公務員のうち2割弱(6万人弱)を有する某行政組織においては、既に何十年も前から事務量を把握してきています。

これはクリティカルマスを優に超える規模です。だからこそ、管理人においては、そこでの事例を行政管理会計という文脈で一般化し、他の行政組織でも再現可能なように全体像を示しつつ組み立ててきているのです。
確かに、以前であれば、労務管理上の問題があったかとは思います。しかし、現在ではいわゆる本省などの一部を除き、そのような問題は小さくなってきております。なので、現在であれば、広く行政に関わる業務に拡張していくという意味でのヨコ展開は比較的容易であると考えているところです。