企業経営における経営者支配からシェアホルダーモデルへ

 先進国、とりわけ米国においては、19世紀には鉄道や鉄鋼などの巨大企業が誕生し、発展してきました。株式会社の規模の拡大に伴って専門の経営者を外部から雇うことが多くなる一方で、株主数の増加に伴って株主の会社経営に対する関心が薄れていきました。その結果、経営者の影響力が増大し、「経営者による企業支配」ともいうべき現象が生じました。
 この経営者支配の構図については様々な議論はあったものの、1960年代までは一般的に見受けられるものであり、全体としてみれば肯定的に理解されていました。

 経営者支配による企業経営については、わが国では社内登用ではありますが、最近まで(現在に至るもかもしれません)一般的に見受けられました。そして、これを組織構造の議論と関連付ければ、この経営者支配による企業経営は、権威、雇用関係、従属、規則と命令、服従の文化といったキーワードが並ぶ官僚型の組織構造と共通する部分が多いことは容易に理解されるでしょう。

即ち、少し前まで一般的であった経営者支配による企業経営は、官僚型の組織構造とオーバーラップしているのです。

 しかし、このような流れの中で、1970年にノーベル賞経済学者のフリードマンは、企業の責務は利益の追求であるという論稿を発表しました。そして、これをきっかけに、株主第一主義ともいわれるシェアホルダーモデルが広まることとなりました。このシェホルダーモデルのバックボーンとなったもののひとつが本人代理人論ともいわれるエージェンシー理論です。
 そして、このシェアホルダーモデルを基礎に、企業の合併や買収(M&A)が一般化していったのです。次回はM&Aについて述べてみたいと思います。