財務会計と管理会計の究極の目的

 今回は、財務会計と管理会計のそれぞれの究極の目的について考えてみたいと思います。これをひと言でいえば、以下の通りです。

財務会計の究極の目的は資金調達、管理会計のそれは経営管理。

 上記の通り、財務会計は資金調達を究極の目的とします。というのも、資金の出し手(投資家)は財務諸表によって投融資の可否を判断します。このため、財務諸表は資金調達のための財務広告ということになります。広告であることから常に誇大広告のおそれを伴います。そこから、企業同士の比較可能性の確保が重要となります。だからこそ、公認会計士が会計数値をチェックすることになります。あえて誤解を恐れずにいえば、財務会計の本質はいわば相互比較のための尺度をいかに作るかにあるといえるでしょう。

 これに対して、管理会計は経営管理を究極の目的とします。経営管理ということから、管理会計は経営学と会計学の間にあるといってもいいでしょう。これまたあえて誤解を恐れずにいえば、管理会計の本質は、能率あるいは効率性・効果性の向上に役立つ方法論(考え方)にあるといってもいいでしょう。あるいは、個別の方法論であるところの管理会計手法の集合体といってもいいかもしれません。因みに、一般に、ヒトを対象とする場合には能率、設備投資等を対象とする場合には効率といわれることが多いようです。

 このような管理会計は、その究極の目的が経営管理にあることから、伝統的に実務家が重要な役割を果たしてきました。とりわけ、管理会計が製造業で発展してきたという経緯から、生産エンジニアや生産技師(19世紀末から20世紀初めにかけて科学的管理法を実践する能率技師として活躍)の大きな貢献が見られました。
 ホワイトカラー業務の比重が高まった現代においては、管理会計の担い手として、生産エンジニアとともに、いわば事務エンジニアのような方々の活躍が期待されるところです。しかも、DXの時代となり、デジタル業務にも通暁した事務エンジニアの重要性がさらに高まってきていると考えますが、これらについては後日、別稿にて述べたいと思います。