会計データとマネジメント

 企業の経営管理においては、会計データはどこにでもあります。現場の活動が逐一会計データとして記録されるからです。また、会計データは金額で表示されているので、異なる現場の実績を横並びで比較するのに便利です。このため、会計データがそこにあるから、会計データを利用できるから、これらをマネジメントに使ってみようという発想になることがあります。その結果、出来の良くないマネジメントシステム(管理会計システム)が作られてしまいます。
 なぜなら、これは、マネジメントシステム(管理会計システム)としてどのような機能を果たすべきかを綿密に検討しないまま、会計データありきでシステム作りを進めてしまったために生じたものであるからです(伊丹・青木『現場が動き出す会計』日経,2016,p.27)。

 行政でも、例えば公会計において、これこれの会計データを作ることができるから、これをマネジメントに活用してみようと旗を振られることも見受けられないではありません。ここでの基本的な発想は、(会計データ⇒マネジメント)です。どのようなマネジメントを行う必要があるかと十分に考えた上で、そのためにはどのようなデータが必要となるのかという発想(マネジメント⇒会計データ)ではありません。それがゆえに、残念ながら、行政の現場に浸透しにくい結果になるのではないかと思われます。いわれたから計算だけはしたものの、どう使っていいものか、どうにもわからないということになりやすいからです。

 企業であれ、行政であれ、それぞれの組織においてどのようなマネジメントを行うのか。これを十分に考えることが先にあると考えます。そして、それぞれの組織に最適なマネジメントを考える段階では、管理会計の様々な方法論(管理会計手法)が典型的な道具として参考になります。あくまでも典型的な道具ですから、それぞれの実情に応じ改変されることもあるでしょう。でも、会計という名前がついているからといって、ここでいう会計データありきの考え方でマネジメントシステム(管理会計システム)作りに取り組むべきではないと考えます。

 管理会計は、やはり、(マネジメント⇒会計データ)の順で考えるべきなのです。