教科書にケンカを売る?:会計学編
どのような分野であれ、定評のある教科書から体系的に学ぶことがまずは重要でしょう。その一方で、体系的に一通り学んだ上で、もう一度考えてみることもまた重要な場合もあると思います。
例えば、会計学の教科書においては、財務会計は外部会計であり、投資家等をはじめとする内外のステークホルダーが財務会計情報を活用する。その一方で、管理会計は内部会計であり、企業内部の経営管理者が活用すると整理されています。そこで、今回はこの点について考えてみましょう。
実は、財務会計=外部会計、管理会計=内部会計という整理は、1960年代のある時期までは米国でも確固としたものではありませんでした。
1960年代のある時期というのは、具体的には1966年の米国会計学会によるASOBAT公表をいいます。それまでは、例えば、管理会計には内部会計以外のものも広く含まれるとする意見もありました。
また、財務会計=外部会計、管理会計=内部会計という整理が一般化した以降においても、合併等にみられるように、管理会計には外部環境に働きかけるという役割もあることから、管理会計の概念を拡張すべきという主張がなされたこともありました。
もっとも、企業の場合には管理会計情報は機微にわたる情報である可能性が高いことから、これをオープンにした場合には悩ましい問題も生じることになります。これに対して、行政の場合には、機微にわたる情報もないではないですが、全体から見ればそれほど多くはありません。このため、行政における取り扱いに関しては、小林麻里・早稲田大学教授(前会計検査院長)が述べられている(大塚・黒川『体系現代会計学9巻』中央経済,2012,p.54)ように、行政の場合には管理会計は財務会計とともにオープンシステムとして機能することが重要であるとする有力な意見もあります。
管理人としては、教科書にケンカを売ろうとしている、そんな大それたことをしようとしているわけではありません。ただ、行政管理会計の役割や機能を考えるにあたって、外部環境とのかかわりを考慮に入れることができれば、例えば、行政に対する納税者の信頼などの観点で、行政管理会計の検討の方向性に大きな可能性を見出せると考えているところです。