政策の企画立案と執行管理

 行政における行政管理会計の活用を考える際に、最も頭を悩ませるのが、行政の守備範囲が非常に幅広いことです。例えば、すぐに思いつく例として、政策の企画立案と執行管理があります。今回はこれについて考えてみましょう。

 政策の執行管理とは、例えば国税の賦課徴収を担う国税庁のような業務をいいます。そこには、税法等の非常に高い専門性が必要ですが、その一方で、繰り返し行われるという意味では定型的な業務が多く、ここに企業活動との類似性が見られます。したがって、政策の執行管理に行政管理会計を活用することはそもそもイメージしやすく、比較的容易であるといえるでしょう。

 これに対して、政策の企画立案は悩ましいです。なぜなら、企画立案の業務は定型化に向かない場合も多いからです。しかしながら、政策の企画立案について細かく観察すれば、部分々々で活用することは可能です。

 例えば、政策の企画立案に伴う業務レベルの効率化で考えてみましょう。霞が関の一部が担うような政策の企画立案では膨大な事務作業を必ず伴います。このため、事務作業のレベル(業務レベル)での効率化に知恵を絞る必要性は大きいといえるでしょう。この効率化により、高付加価値の企画立案業務を増やすことができます。

 また、例えば、政策によっては、(少し専門的な用語ですが)ロジックモデルや戦略マップで考えることが可能な分野もあります。この場合、政策の企画立案の初期段階で考えられた(多くの仮説を含む)ロジックモデル等をもとに、段階の進展に応じて(多くの仮説に基づきつつ)業務レベルまでブレイクダウンしていく(これをカスケードするといいます)ことが必要です。なぜなら、最初はともかく、ある程度の段階にいたってもなお業務レベルまでブレイクダウンできない政策は所詮「絵に描いた餅」だからです。そして、このロジックモデル等の作成とそのブレイクダウン(カスケード)においては、行政管理会計を活用することができます。これにより担当者も方法論の手助けが得られることとなりますので、よりラクに考えることができるようになるでしょう。

政策の企画立案分野を念頭に行政を抽象的に考え、行政には管理会計はなじまないと思考停止することが生産的であるとは思いません。

 むしろ、行政のそれぞれの具体的な分野について、それぞれの具体的なレベル(政策か、業務か、ないしは政策から業務へのブレイクダウンかなど)で考え、方法論としての行政管理会計の活用を考えてみることこそが重要であると考えます。