行政管理会計による効率的・効果的な行政の実現

 企業においては、より効率的・効果的な企業活動を実現していくために、管理会計を活用します。現在の管理会計論は、管理会計の様々な方法論(これを管理会計手法といいます)の道具箱の状況を呈しています。管理会計手法は、時代々々の要請を背景に編み出され、活用されてきました。しかも、そこでは、財務指標に影響を与える非財務指標のマネジメントをもどんどんと取り込んできています。というのも、マネジメントで重要なのは、財務指標それ自体ではなく、それに影響を与える非財務指標であるからです。そして、その上で、個別の企業の状況に合わせていくつもの管理会計手法を駆使し、効率的・効果的な企業活動を実現しているのです。管理会計がなければ効率的・効果的な企業活動は不可能であるといってもいいでしょう。

 組織的な活動という点では企業も行政も同じです。ただ、行政の場合に悩ましいのは、収益(売上)や利益が財務指標で把握できない場合が多いことにあります(収益が把握できなければ利益も把握できません)。したがって、行政の場合には、企業の場合以上に、財務指標に代えて非財務指標で考えることが重要となります。

しかし、管理会計手法としてのロジックは、企業の場合と行政の場合とで基本は同じです。

 行政の場合、例えば、収益側は非財務指標で考え、費用側は財務指標で考える。この場合、利益は財務指標では把握できませんが、それでも、収益側の非財務指標を大きくするとか、収益側は変えずに、費用側の財務指標を小さくするという感じで、どっちの側をどのように考えればいいのか、大きな方向性はわかります。

 さらに、収益側を非財務指標で考えるのであれば、費用側も非財務指標のままで考えるということもありえます。例えば人件費などは、わざわざ財務指標に直さずに、事務量(投下時間)のままで考えていくことで用が足りる場合も多いでしょう。

 財務指標を用いない場合であっても、収益や費用、その差額の利益というロジックは基本的には同じなのです。非財務指標でも同じロジックで思考ができる、ここがミソだと考えます。前回述べたような効率性や効果性の向上にいかにはつなげるかを考えるに際しては、ここでいうロジックを併せて考えることが有益だと思います。