コミュニケーションツールとしての管理会計

 前回では、戦略の可視化とその徹底の重要性について述べました。また、少し前には、管理会計手法には大小があることから、戦略と現場レベルの業務とが連結できることについて言及しました。これらを踏まえ、今回は、「管理会計の外縁」の「戦略マネジメント」編の最後として、コミュニケーションツールとしての管理会計について述べてみます。

 組織が戦略を可視化して、組織外に示すことができれば、組織の外からみれば当該組織の戦略は非常に理解しやすいものとなります。もちろん、ライバルが存在する企業の場合には、可視化できる戦略もある程度抽象的なものにならざるを得ないでしょう。
 この戦略についての理解のしやすさは、組織外にいるステークホルダーからの当該戦略への支持や改善策等のフィードバックにつながります。戦略が具体的にわかりやすく示されるからこそ反応しやすくなるからです。
 そして、これにより、当該組織においては、このステークホルダーからのフィードバックを踏まえて、組織の戦略を修正していくことができるようになります。場合によっては、戦略を実施していくための業務についての修正も必要となるかもしれません。
 このように、組織外へという意味での戦略の外への可視化により、組織外のステークホルダーからのフィードバック、それによる戦略等(場合により業務も含む)の修正という効果も期待できることになります。

 前回述べたように、戦略は徹底されることが大事です。そのためには、戦略を可視化してわかりやすく示すことが求められます。しかも、管理会計手法には大小があることから、戦略と現場の業務をつなぐことができます(カスケード)。その結果、戦略等の更なる徹底もより容易となるでしょう。
 これにより、現場の従業員や中間層といった組織内のステークホルダーからのフィードバックも期待できることになります(コミュニケーション)。このフィードバックによって組織の戦略等が修正されることもあるでしょう。
 このように、組織内へという意味で、戦略と業務についての内への可視化により、組織内のステークホルダーからのフィードバック、それによる戦略等の修正という効果も期待できることになります。

 管理会計による外への可視化、内への可視化を通じて、組織内外のステークホルダーとの間で、管理会計がコミュニケーションツールとして役立つことになるのです。