管理人の問題意識

 わが国なかりせば、世界の先進国は白一色。わが国なかりせば、アジアは中国一色。したがって、わが国がわが国らしく、社会的にも経済的にもそれなりの社会としてまとまって存在し続けることは、世界の多様性に直結すると考えます。ここに議論の余地はないでしょう。

それでは、わが国の最大のリスクはなにか。

 人口減少は確かに問題ですが、そもそも戦前には、近い将来2億何千万にもなると予想された人口増加圧力のもと、国策を大いに間違え、多大なる犠牲を払ってしまいました。これに比べると対応はしやすいと思います。温暖でそれなりに広く豊かな国土に、高い技術を持ち、今より少ない人口で居住するのであれば、一人当たりではそれなりの生活が可能となるはずです。再生エネルギーなどを活用し、資源問題の深刻度も相当に緩和できるかもしれません。

 それでは、わが国の最大のリスクはなんでしょうか。常識的な社会科学を踏まえれば、財政の持続可能性、つまり、ここまで積み上がった借金をいかに返すかに尽きると考えます。とりわけ人口減少下では1人当たりの返済負担が増えるので、より深刻な問題となります。財政さえしっかりしていれば、社会的包摂のための財政出動も、安全保障のための一時的な財政出動も可能となるでしょう。財政に余裕がなければ、ない袖は振れないということになり、社会的な弱者にしわ寄せがいく可能性がきわめて高くなります。

 積み上がった借金をいかに返すのか。そのためには残念ながら、将来的にはいずれ増税が必要です。それでは、増税を納税者に納得してもらうための王道はなにか。王道はやはり、行政に対する納税者の信頼です。行政が、公正・公平は当然の前提として、効率的・効果的な行政の実現に向けて努力していること。これらについて納税者に信頼してもらうこと。これらに尽きるのではないでしょうか。

 効率的・効果的な行政の実現に向けた行政側の努力を納税者に示し続けることを通じて、行政に対する納税者の信頼が確保される。これこそ、今の社会に必要なものであり、増税のための前提条件とすらいえるのではないでしょうか。そして、長い目で見ればそこにごまかしは通用しないでしょう。
 だからこそ、効率的・効果的な行政の実現に向けて行政が自ら努力し続ける。この努力を示していくためのコミュニケーション・ツールとしての行政管理会計が必要となるのです。
 行政管理会計はたしかにミクロを対象にします。しかし、その視野の先には壊れかけた社会を再び構築していくという、とてつもなく大きな役割があると管理人は考えています