ビジネスモデル論と管理会計
前回は経営戦略論について述べましたが、2000年代に入るとビジネススモデルという用語が一般的に用いられるようになりました。そこで、今回はビジネスモデル論と管理会計の関係について言及します。
少し前に述べたように、インターネットやITC等のデジタル化といったDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展により、限界費用が大幅に低下しました。この限界費用低下の中で、持続的な競争優位を確保する観点からビジネスモデル論が盛んに議論されるようになりました。
ビジネスモデルとは、前回言及したポジショニングビューとリソースベーストビューとが融合した、ライバルにまねされにくいフレームワークのことを意味します。そして、ビジネスモデルは旧来の戦略的フレームワークを拡張するためのコンセプトであるとも説明されています。
そこでは、ターゲットとして一部の顧客だけではなくステークホルダー全体を見渡し、提供価値をいかに創造し、そこから収益をいかに生み出すか、更には他社との協調等といったオペレーションをいかに実現するかといった視点について、行ったり来たりしながらスパイラル状に思考し、ビジネスモデルを考え出すことの重要性が指摘されています。
ビジネスモデル論では、ビジネスモデルがイノベーションと結びつき、ビジネスモデルの変革こそが、イノベーションの源であるとされているようです。そして、従来の自社中心のクローズドイノベーションから、他社を幅広く巻き込むオープンイノベーションへの転換が求められています。
また、少し引いて全体的にみれば、GoogleのAndroidやAppleのiOSなどの技術等を中心としたプラットフォーム、Amazonや楽天などの取引の場としてのプラットフォームといったプラットフォームビジネスなどもみられるようになりました。
以上のようなビジネスモデル論の進展は管理会計にも影響を与えています。具体的には、価値創造の源泉となるインタンジブルズ(無形の資産)とは何か、また、そのマネジメントはいかにあるべきかといったインタンジブルズ研究などが注目されています。また、組織間管理会計の議論も関心が高まっています。1990年代には、自動車産業の系列間取引のような組織間のコストマネジメントが中心的な論点であったのですが、現在では、コスト面にとどまらず、組織間のマネジメントそのものをいかにすべきかといった研究が盛んになってきています。
経営戦略論と管理会計論の交点において戦略マップというブレークスルーが生じたように、ビジネスモデル論と管理会計論の交点においても何らかのブレークスルーが生じるような気がしてなりません。管理会計論からこれをみれば、管理会計の外縁の拡張ということになるのでしょう。管理人としても関心をもってみているところです。