管理会計の雑食性

 〈会計と非財務指標〉の項の最後として、管理会計の雑食性について述べたいと思います。雑食性は学際性ともいいますが、これだと少し上品過ぎてイメージがわきにくいので、ここでは雑食性とします。

 管理会計の歴史を振り返れば、隣接分野で発展してきた様々な考え方について、これを会計メカニズムと関連付け、管理会計手法の1つとして取り込みつつ、管理会計論を発展させてきたことがよく理解できます。

 いくつか例を挙げてみたいと思います。
 まず、管理会計のそもそもの成り立ちに関係しますが、テイラーが提唱した科学的管理法は会計メカニズムと関連付けられ、標準原価計算という手法として位置付けられました。そして、これに予算統制論が加わり、1920年代の米国で管理会計論が誕生しました。
 また、当初、工学的な手法にすぎなかった損益分岐点分析は、1930年代の米国で会計メカニズムと関連付けられることにより、管理会計手法として精緻化しました。
 更に、1930年代の米国では、経済学の限界分析思考が会計システムに関連付けられ、直接原価計算として発展してきました。
 そして、戦後のわが国においても、製造業において発展してきたTQC(Total Quality Control:全社的品質管理)や原価企画、TPS(Toyota Production System:トヨタ生産方式)などが会計メカニズムと関連付けられ、管理会計手法として認識され、いわゆる日本的管理会計として世界中に影響を与えました。
 近年でも、BSC(Balanced Scorecard:バランストスコアカード)から誕生した戦略マップは、経営戦略論の様々な考え方を取り込みつつ発展してきています。

 このような管理会計の歴史を踏まえつつ将来を見通せば、近い将来、管理会計論と結びつくのではないかと考えられる近接分野の議論もいくつか見受けられます。これらについては後述します。

 このように、管理会計は近接分野の様々な考え方を取り込みつつ、会計メカニズムと関連付け、管理会計手法として組み立ててきたという歴史を有します。この雑食性は今後とも変わることのない管理会計の特徴の1つであり続けるでしょう。