管理会計の外縁:業務編
今回は、業務の分野について、なぜ非財務指標が重要になるのか、これらがどうして管理会計の範疇に入るとされているのかについて述べたいと思います。
業務の分野とは具体的には、現場のオペレーション業務などを意味します。従来型の製造業、とりわけ工場が典型的なイメージです。そこでのマネジメントにおいては、財務指標ではなく、非財務指標が活用されてきました。内容的には、TQC(Total Quality Control:全社的品質管理)などを考えていただければと思います。
管理会計論は経緯的に、製造業を中心に発展してきました。製造業では工場がコストの塊(かたまり)であったことから、管理会計論においても、工場の製造現場のオペレーション業務に並々ならぬ関心をよせてきました。
このため、管理会計の教科書においても、厚手のテキストであれば、現場の業務についてもしっかりと言及されているものが多くあります。もっとも、コンサイスなテキストの場合にはスペースの関係から割愛されていることが多いです。
現場のオペレーション業務をどう管理するかは、実務上、非常に重要です。なぜなら、現場のオペレーション業務をコントロールできないと、費用それ自体もコントロールできないからです。
現場のオペレーション業務をマネジメントしていくことの重要性は、実は現代に至るも変わりません。確かに、産業に占める製造業の比率は小さくなりました。その一方で、サービス業の比率は高くなっており、製品とサービスという違いはあるものの、オペレーションそれ自体の重要性に変化はないといえるからです。
加えて、現在ではホワイトカラー業務も増えています。このホワイトカラー業務にもオペレーション業務は数多く含まれています。
昨今では、DX(デジタルトランスフォーメーション)が大きく進展しています。DX下でのホワイトカラー業務においては、これまでと異なり、様々なデータが取れるようになってきています。製造業の現場で様々なデータが取りやすかったことが製造業を対象とした管理会計論の発展に結びついたことを踏まえれば、今後はDX下でのホワイトカラー業務と管理会計論の関係に新たな可能性があると考えます。
DXによるデータ収集を踏まえ、ホワイトカラー業務をどのようにマネジメントしていけばいいのか。これは今後のホットイシューのひとつとなるでしょう。