財政と経営
公会計関連ということで、本項では財政と経営について述べてみたいと思います。
実は、財政と経営はあまり相性がよくありません。
これを財政当局の立場から考えてみましょう。
経営が悪化した公共団体や公営企業、法人などは、何とかして政治に要望し、特段の財政措置を求めることになります。そして、これらの要望を受けた政治においては、財政当局に対して何らかの財政措置を講じるよう求めます。財政当局としては、政治の要請の手前、何らかの財政措置をしなければなりません。いわば、財政は、政治を前にすると、慈悲深い財政を演じることがどうしても求められるのです。財政において政治の影響を排除できない以上、何らかの財政措置が必要となるのです。
最初は厳しいことをいっていても、政治の手前、最後には譲ったように見せ(演じ)、「情」をからめつつまとめ上げるなど、よく見聞きするところです。
それではこれを公共団体や公営企業、法人などの立場から考えてみましょう。
これら団体等の立場で考えると、当初は厳しく設定されていた予算の制約がゆるくなり(予算制約がソフト化し)、新たな予算措置を求めた機会主義的な行動への誘因が強く働くことになります。すなわち、当初から甘めの計画を立てておき、足りなくなって大騒ぎをすれば、何らかの措置を引き出すことができることになります。これが経営という機能を弱めてしまうことは容易に想像できると思います。
将来的な人口減少が予想されるにもかかわらず、将来計画を甘く設定するのは非常に危険です。それにもかかわらず、政治的その他の理由から将来計画が甘くなり、その結果、財政を投入せざるを得なくなるということは、これまたよく見聞きするところです。
将来の人口減少による低成長や金利上昇による財政逼迫を考えれば、それぞれの団体等において、きちんとした経営を行うことにより、財政にかける負担を小さくすることが本来的にのぞましいことは明白です。そのためには、それぞれのポイントにおいて経営を機能しやすくするために何が必要か、実は財政においても工夫していくことが求められているのです。すなわち、
経営を機能させることのできる財政とはなにか。財政における経営との適切な距離感とはなにか。財政においても、これらについて真剣に考えていく必要があると思います。