ニューパブリックマネジメントと会計
今回は、ニューパブリックマネジメント(NPM)と会計について述べ、これが前述の市場型の組織構造と重なり合うことに言及します。
NPMは1980年代のサッチャリズムやレーガノミクスから始まりました。1990年代には世界的に大きな流れとなり、わが国では1990年代末から2000年代に大いに流行しました。わが国でもPFI(Private Finance Initiative)や独立行政法人、政策評価などの制度が導入されました。また、財務会計を中心とする公会計の取り組みも進展しました。
NPMの特徴について、従来の行政と比較しつつまとめてみます。
まず、そこでの市民は、従来の行政が有権者やタックスペイヤーと位置付けられていたのに対し、NPMでは行政サービスの顧客や消費者と位置付けられています。また、法的には、従来の行政では規制が優先されていたのに対し、NPMでは規制緩和等による経済性の改善が優先されています。更に、行政組織の優先する業務として、従来の行政では政策の実施であったのに対し、NPMでは競争的な市場を作り、その市場を活用することであるとされています。そして、従来の行政ではインプット(行政サービスを提供するために投入されたリソース)や組織内プロセスに焦点が当てられていたのに対し、NPMではアウトプット(提供された行政サービスそのもの)に焦点が当てられています。最後に、従来の行政では規則遵守が重要視されていましたが、NPMでは効率性と財務成果が重要視されると整理されています。
そして、NPMを会計との関係を考えれば、そこでは市場の活用が優先されることから、官民の比較が頻繁に求められることとなります。この比較に際し、物差しが違うととんでもないことになります。このため、そこに役立つ物差しとしての財務会計が重要なものと認識され、民間並びの財務会計の導入が求められてきたのです。加えて、例えば特定の行政サービス1単位当たりの原価を算出する原価計算も求められてきました。原価計算は管理会計の一部ですが、財務諸表に組み込まれることから財務会計との関係が非常に強い分野になります。
以上から、NPMは市場型の組織構造と重なり合うといえるでしょう。そして、NPMでは市場の活用が課題であるからこそ、財務会計と原価計算が重要視されているのです。