思考の補助線としての管理会計

 管理会計の中心は、経営管理の方法論である管理会計手法です(管理会計技法ともいいます)。管理会計が誕生したのは1920年代の米国ですが、時代々々の要請の下、様々な管理会計手法が編み出されてきました。これは、これからも変わらないでしょう。
 その一方で、現実のマネジメントでは、必要に迫られて様々な方法が採用されています。その中には管理会計手法のようなものもあるでしょうし、単なる思い付きとしか思えないようなものもあるでしょう。

 しかし、マネジメントにはある程度の定石があります。この定石を押さえておくためには、方法論を知っておくことが重要です。この方法論は広い意味での経営学に属する分野に存在しますが、中でも最終的に財務指標に影響を与える方法論としては管理会計手法があります。そして、これが管理会計論としてまとめられているのです。

 企業経営における財務指標の重要性を踏まえれば、マネジメントの定石を押さえておくための主な方法論として管理会計手法があるといってもよいでしょう。

 実際のマネジメントにおいて管理会計を使って考えることは、管理人には、中学の時分に幾何の問題を考えるに際して補助線を引きつつ考えたことと、まるで似たような感覚にとらわれます。思考の補助線といってもいいのかもしれません。
 一見、複雑に見える現実をマネジメントするにあたり、特定の管理会計手法をあてはめればどうなるか。当該管理会計手法を採用した場合のメリットとデメリットは何か。連携させるべき他の管理会計手法にはどのようなものがあるのか。これらを考えつつ、注意すべきポイントを絞っていくことができるのです。試行錯誤を最小限にすることができるのです。
 思考の補助線を引きつつ、マネジメントの定石を見出し、押さえていく。これが管理会計を活用することの意味であると思います。

すなわち、管理会計は、思考の補助線なのです。