政治と会計

 公会計に関連して、いくつか述べたいと思います。まず、ニューポリティカルガバナンス(以下ではNPoGと表記します)の議論を踏まえつつ、政治と会計との関係について言及します。

 行政において政治を排除することは、過去幾度となく取り組まれてきましたが、それが成功することはありませんでした。しかし、そうではありながらも、政治と行政の距離をいかに保つかという点は引き続き課題であり続けています。

 そこで、今回は、会計が政治と行政の間に入りうることを述べたいと思います

 行政においては、2012年頃からNPoGという議論がいわれているようです。NPoGは4つの要素からなるととされています。具体的には、①行政のガバナンスと継続的な政治的キャンペーンとの統合、②政治スタッフの増加、③幹部公務員の政治化、④時の政権への公務員の忠誠への期待です。
 このNPoGの議論は、英国に範をとるウェストミンスター諸国である英加豪NZの動向を踏まえたものですが、民主党政権時代も含めたわが国にもあてはまる議論のように思われます。ただ、学問的にはNPoGについて今後の立証が待たれるという指摘もあります。

 このように政治と行政が(政治優勢の下で)融合しつつある中で、会計はいかにあるべきでしょうか。管理人としては、会計には、①「政治に気づきを与える」、②「行政の自律性を確保する」という2つの役割があるように思われてなりません。

 まず、①「政治に気づきを与える」ですが、これは財務会計としての公会計(とりわけ地方公会計)の役割だと思います。たしかに、国の場合には比較対象先がないので効果が薄いかもしれませんが、地方の場合には地方公共団体同士の相互比較が可能であり、政治の議論に気づきを与えるきっかけになり得ると思います。

その一方で、②「行政の自律性を確保する」ですが、政治を完全に排除していくことは不可能ではあるものの、そのような中でも行政の自律性をいかに確保するかは重要なテーマであり続けるでしょう。管理人としては、そこにシステムとしての管理会計の役割があるように思います。なお、ここでシステムとしたのは、この場合の管理会計は、個別の経営管理(管理会計)手法の話ではなく、行政組織の組織戦略から現場業務までをカバーする経営管理(管理会計)システムをイメージしているからです。