公会計の議論に足りないもの

 財務会計としての公会計については、関係者の鋭意のご努力により、これまで財務省や総務省において検討が進められてきました。もちろん、今なお細かい論点は残されているとは思いますが、概ねの検討は終わっているのではないかと思います。

 企業会計並びの会計をということで公会計があるのだとすれば、企業会計に財務会計と管理会計があるように、公会計にも両者があると考えることもできます。その場合、公会計としての管理会計(『日々雑感』ではこれを行政管理会計と呼んでいます)についての検討は進んでいるのでしょうか。

実は、公会計において管理会計の議論はほとんどなされていません

 その一方で、現場々々では(必要に迫られて、しかも管理会計とは意識されずに)管理会計的な取り組みが行われてきています。企業の管理会計では、マネジメントに役立つ道具として、大きく意思決定と業績管理の2つの役割があるといわれています。これを行政分野でみればどうなるでしょうか。
 意思決定に役立つものとして、例えば公共事業等においては、企業のプロジェクト等の経済性計算(採算性の計算)と似たような構造を持つ、いわゆる費用対効果分析(B/C分析)が既に行われています。また、業績管理をみても、例えば国税組織の人日システムや(独)統計センターの工手間システム、佐賀大学附属病院のテナント式損益管理などが既に行われています。

 

(参考:行政管理会計の基礎と実践 #1(プレゼンテーション)【RIETI BBLウェビナー】より)

このように、管理会計は公会計としては議論されていませんが、実はそれぞれの部署において必要に迫られて実施されてきているのです。

 ただし、ここで急いで補足しなければならないのですが、管理会計は、行政分野によりある程度のパターン化はできるにせよ、行政組織ごとにその業務に応じてそれぞれに多少なりとも異なる形で活用されるのが自然です。このため、比較可能性を重んじる財務会計的な感覚からは自然な、多くの行政組織に一律的な取り扱いを求める傾向のある公会計にはなじまない側面があることは否定できないと思います。管理人としては、ここに本質的な問題があるような気がしています。