公会計の重要性

 前回、公会計のこれまでの議論が財務会計一直線できたことを述べました。この「日々雑感」では行政管理会計が中心的なテーマですので、もしかすると少し批判的に聞こえたかもしれませんが、管理人としては財務会計が中心であること自体を否定しているわけではありません。

 まず、管理会計の観点から経営管理を考えるにあたり、財務会計がしっかりしていることがのぞましいです。ただ、管理会計は財務会計上の数値だけにとどまるものではありませんし、財務指標だけにとどまるものでもありません。財務会計がなければ管理会計はできないという関係にはないのです。しかし、それでもなお、財務会計がしっかりしていると、様々な経営管理(管理会計)手法を考える際の基礎となる財務指標が得られやすいという側面は否定できないように思います
 加えて、地方公会計では同種同規模等、比較の対象が多いことから、財務会計的な相互比較の取り組みが非常に効果的であるということは指摘できるでしょう。

 また、管理人が財務会計がなにより重要だと考える理由は、財務会計としての公会計は将来、海外からの資金調達に際して死活的な役割を担うからです

 というのも、わが国は現在のところ世界最大の債権国ですが、その人口構造を考えると、将来的には貯蓄を担う現役世代が減少し、貯蓄を取り崩す高齢者世代が増加します。このため、国内の貯蓄余剰が減少して、将来的には海外からの資金調達を本格的に考えなければいけない時代が来ることは想像できるところです。
 そして、海外からの資金調達に際しては、海外投資家の厳しい目線に応えていかなければなりません。貯蓄が少なくなった国家においては、一国の経済運営に対する信頼の維持のみならず、その財政状態の適正な開示は非常に重要なものとなるでしょう。

 もちろん、主権国家が国家信用の下に資金調達するのですから、そのような厳しい目線は考えなくてもいいという意見はあるでしょう。しかし、新興国をみるまでもなく、国内貯蓄という裏付けのない国家には、残念ながらそれなりのプレミアムが求められるでしょう。
 また、ほかにも、日本円は国際的な通貨なのでいくらでも調達できるはずだという議論もあるかもしれません。しかし、国内貯蓄の裏付けのない日本円がどこまでその地位を維持できるかということも考えておく必要はあると思います。

 いずれにせよ、海外からの資金調達において、いかに海外投資家を納得させることができるか。この観点からは、資産債務等の各国比較が可能となる、国際的にもそん色のない、財務会計としての公会計が必要視されることになります。