公会計の意味するもの

 これから数回にわたり、公会計について述べたいと思います。

企業会計に財務会計と管理会計があるように、公会計にも公財務会計(?)と公管理会計(?)があるという整理も可能かもしれません。しかし、これまでの公会計の議論は財務会計の議論が中心でした。すなわち、

現状の公会計は、いわば財務会計一直線という状況になっているのです

 従来から、国や地方公共団体には官庁会計といわれる会計があります。そこでは財政法や地方自治法等に基づき、(現金の出入りで把握する)現金主義や(大福帳のような)単式簿記を特徴とする会計が行われていました。
 しかし、昨今では、(減価償却等を伴う)発生主義や(借方貸方の両面で把握する複式簿記を特徴とする企業会計と同様の会計にすべきであるという主張がなされています。このような取り組みをここでは公会計といいます。
 なお、少しややこしいのですが、国の場合には一般的に国の財務書類といわれているのですが、ここでは簡略化のため国については公会計、地方については地方公会計と表記します。

 そもそも、公会計・地方公会計の取り組みに先立つものとして、東京都における1990年代後半からの「機能するバランスシート」に関する取り組みなどがありました。そこでは、財務状態の正確な把握と適時の分析のためには発生主義や複式簿記が必要であるとされ、発生主義や複式簿記を内容とする公会計の検討を求める声が高まりました。

 その後、2003年には財政制度等審議会の部会において「公会計に関する基本的考え方」がとりまとめられました。そこでは公会計の意義・目的について、①議会による財政活動の民主的統制、②財政状況等に関する情報開示と説明責任の履行、③財政活動効率化・適正化のための財務情報の3点にまとめられています。
 このうち、①では(現金主義に基づく)予算・決算を通じた議会のコントロールが、②では税財源の使用状況や資産負債の状況についての開示が、③では財務情報の充実がその主な内容とされています。

 ここに現れているように、国の公会計は当時からもっぱら財務会計を中心に議論がなされていました(①は少し意味合いが異なるかもしれません)。そして、その後も財務書類を作成するためにはどうすべきかという観点から(ある意味、技術的な)議論が積み重ねられてきました。また、地方公会計の場合には、そもそも相互比較のための尺度としての財務会計が地方公共団体間の比較に非常に有効であるといった事情もありました。

 そして、これらの動きの背景には、1990年代末から2000年代にわが国で大いに流行したNPMの動きがありました。前述したように、NPMでは財務会計や原価計算が重要視されていたのです。