価値評価とB/C分析等

以前、管理会計論とファイナンス論の境い目について、明確ではないものの、一応、設備投資やプロジェクトの経済性(採算性)の計算は管理会計論の対象となり、企業の価値評価(Valuation)はファイナンス論の対象となると申し上げました。ただ、これらはいずれも割引率を用いて現在価値に戻して考えるという点で似通っています。

一方、行政においては公共事業でよく用いられるいわゆる費用対効果分析(以下、B/C分析。「BバイC」と読む。経済学的には費用便益分析のこと)があります。
B/C分析の計算構造は、費用を分母に置き(費用ですからもともと財務指標です)、また、効果を相当の仮定の上で財務指標に換算して分子に置き、これらをそれぞれ割引現在価値化して比率で示すというものです。

このB/C分析は、計算構造だけを見れば、管理会計論の経済性計算やファイナンス論の企業価値評価と非常に似通っています。

もちろん、根拠となる学問分野は異なります。B/C分析は厚生経済学に基礎づけられており、対して、企業価値評価はMM理論等のファイナンス論に基礎づけられています。

しかし、活用の目的を考えれば、これらの計算の目的はいずれも意思決定にあります。

B/C分析であれば、これは当該プロジェクトの採用、中止、延期等の意思決定をするために計算するものです。企業価値評価であれば、M&A等の意思決定のためのものですし、プロジェクト等の経済性計算であれば、投資案の採用、中止、延期等の意思決定をするためのものです。

以前、管理会計論は雑食性が強いことを申し上げました。
管理会計論のこの特性を踏まえれば、管理人1としては、意思決定への活用という目的が同じであれば、管理会計論の中で考えてもいいのではないかと考えています。

現在の管理会計論においても、元をたどれば、経済学(限界効用論が直接原価計算になど)、経営戦略論(様々な戦略論からバランストスコアカードへなど)、原価計算論(間接費の配賦から活動基準原価計算へ、更には活動基準管理へなど)、生産管理論(全社的品質管理から標準化等の業務改善へなど)等々、様々なものに行き着きます。このように、出自が異なる経営管理手法であっても、管理会計論の中では管理会計手法として並べて述べられているのです。

このことから、行政で活用される管理会計を行政管理会計と置き、そこでの意思決定に活用される各種の計算については、出自が異なっても行政管理会計の対象に含めてよいのではないかと考えております。
特に、ともに意思決定に用いられる、プロジェクト等の経済性計算と公共事業のB/C分析とは、行政管理会計の中で並べて考えていいのではないかと思っております。