やっぱり値付けは難しい?

前回は、将来キャッシュフローの予測が難しいというお話をしました。今回は更に、値付けは難しいというお話をしたいと思います。

企業であれ、事業であれ、プロジェクトであれ、値付けは難しいです。
将来キャッシュフローの予測が難しいことはその理由の一つですが、これに加え、その将来キャッシュフローについて割引率を用いて現在価値化する際の割引率が企業により異なることももう一つの理由として挙げられます。

割引率が企業により異なるのは、資本と負債の比率の違いにより、負債の税負担軽減効果が異なることや、市場全体のリスクに対する感応度が企業により異なることなどによるものです。
仮に、将来キャッシュフローが同じだとすると、割引率が小さい企業ほど、事業やプロジェクト等に対して高い評価を行う(値付けをする)ことができます。

例えば、都心にある遊休地を活用したプロジェクトを考えてみましょう。
プロジェクトの担い手として複数の企業があったとし、いずれの企業も同じ将来キャッシュフローを予想できる(理想的なプロジェクトを提案できる)ものとします。この前提では、割引率の低い企業ほど高い値付けができることとなります。

ここで更に、プロジェクトの担い手としての国(中央政府)を考えてみましょう。
一般に、国は一番低い金利(リスクフリーレート)で資金を調達できますから、仮にライバル企業と同じ将来キャッシュフローを実現できるとした場合には、国が一番高い値付けができることとなります。

では、この土地が国有地だった場合はどうなるでしょうか。
ここでみてきたように、都心の国有地などは、誰がプロジェクトの担い手となってもそれなりの将来キャッシュフローが実現できるでしょうから、そこを同じとした上で、割引率からだけで考えると、国が自ら所有し続けることも一つの選択肢になるのでしょう。
こう考えると、都心の国有地は売却すべき、ということではないのかもしれません。

といことで、やっぱり値付けは難しいのです。