価値評価と管理会計

今回から「管理会計の外縁」の項目のうち「事業等の価値評価」編に入ります。

管理会計論の数ある隣接分野の一つに(コーポレート)ファイナンス論があります。

管理会計論では、設備投資やプロジェクトの採算性(経済性)を評価するために、意思決定に役立つ機会原価や埋没原価などの様々な原価概念に加え、現在価値(割引率)を含む様々な計算方法や、金融オプションを活用したリアルオプションなどの議論を扱います。
一方、ファイナンス論は、現在価値(割引率)の考え方からはじまり、利息や元本等を踏まえた債券価格の計算、資本コストの計算や金融オプションなどを経て、企業価値の評価(Valuation)などに展開していくのものです。ファイナンス論は、M&Aの流行を背景に1970年代から80年代の米国で大いに発展しました(わが国ではもっぱら1990年代以降です)。

それでは、管理会計論とファイナンス論との境界はどのように考えたらよいのでしょうか。

これは、管理会計論がしばしば越境しているため、明確には分けられないものの、それぞれの教科書などを踏まえると、設備投資やプロジェクトの経済性評価は管理会計論、事業や企業の価値評価はファイナンス論と一応は分けられるように思います。

しかし、悩ましいことに、意思決定への役立ちという点では、両者の目的は同じです。意思決定に必要な議論という観点からみれば、両者が似たようなものとなるのはやむを得ないでしょう。

ちなみに、管理人1はロートルながら、コロンビア大学で自らの関心分野に関連する英文論稿(このHPでもリンクを貼っています)や、それらを基にした帰国後の学会発表等の準備のかたわら、管理会計の隣接分野として、ファイナンス論、ガバナンス論及び業務マネジメント論の3つを集中的に聴講してきているところです(他にFinancial Planning & Decisionという米国流の管理会計論も)。
これらの両立はしんどいところもありますが、ファイナンス論や業務マネジメント論などは、当地に来る前に大学院で途中まで教えていたことも多く、楽しみながら聴講しております。議論そのものの組み立てや講義の仕方、強調のポイントなど、我が国でのそれと違うのではと思うことも多く、大いに刺激を受けているところです。
ともあれ、今後、本編では、事業等の価値評価について簡潔に述べていきたいと思います。