業務マネジメントと管理会計
前回述べたように、管理会計においては、伝統的に戦略の下に位置付けられる業務マネジメントが議論の中心でした。コストの塊である工場などの製造業を中心に発展してきた管理会計論は、この業務マネジメントにおいて、その外縁として工場の生産管理論などの様々な議論と接することになります。前述した管理会計の雑食性を踏まえれば、ここに管理会計の新たな発展のヒントが、これまでもわんさかとありましたし、今後ともわんさかとあり続けるように思います。
管理会計の雑食性に関するいくつかの例をあげます。例えば、Total Quality Control(TQC)/Total Quality Management(TQM)です。Operations Research(OR)も含めて考えてもいいかもしれません。有名な業務改善活動や方針管理/方針展開などもこれに含まれます。これらは製造業の生産現場中心に活用されてきたものですが、だからこそ、管理会計論、とりわけ製造業を中心に発展したいわゆる日本的管理会計と密接に関連しているのです。
これらについて、一部には、日本の製造業の華やかなりし時代の議論であり、今となっては時代遅れの議論だという方もおりますが、ホワイトカラー部門への展開という意味で考えれば、今後ともその輝きが失われることはないと思います。
また、近年では、プロジェクトマネジメントとの関連も指摘されるようになってきています。例えば、米国発のプロジェクト管理についての体系的知識であるProject Management of Knowledge(PMBOK)や、日本発のProgram & Project Management(P2M)などです。今後、ホワイトカラー部門を含め、様々な現場でPMBOKやP2Mが用いられてくるに従い、管理会計との関連も更に発展していくものと思われます。
更に、企業では1990年代からBusiness Process Re-engineering(BPR)がいわれてきました。遅ればせながら、わが国の公共部門でも2010年代半ばからいわれるようになりました。これなども業務の標準化と密接に関連しますので、管理会計として考えていくこともできるでしょう。
そして、最近では、RPA(Robotic Automation Processing)やDX(Digital Transformation)もいわれてきています。これまでは行われてきたICT(Information and Communication Technology)の活用がオフィスにおける大粒な業務を対象としてきたのに対し、RPAはその対象から漏れてきた小粒な業務を対象に進めるものであり、業務の詳細な手順を変更していくものであることから、事務改善活動と密接に関連するという特徴を有します。
また、いうまでもなくデジタル化の進展には著しいものがあり、DXにより、生産現場だけでなくオフィス業務でもデータが取れるようになり、現在では顧客のサイト閲覧等の購買行動データが自動収集できるようになったことから、マーケティングへの活用等も期待されているところです。
管理会計は、ここで述べたような分野を取り込みつつ、これまでも発展してきましたし、これからも発展し続けることが期待されるところなのです。