管理会計の外縁:価値評価編

 管理会計において非財務指標が重要となる分野として、最後に、企業や事業に関する価値評価論(いわゆる企業価値評価論:Valuation)について言及します。
 この企業価値評価論は主にコーポレートファイナンスで扱われています。そして、財務諸表を用いることが多いことから、伝統的には財務会計との関係が深いようです。

 一方、企業価値評価論に対しては管理会計からの接近も見られます。管理会計の1つの分野に、投資の意思決定、即ち、割引現在価値等を用いる、設備投資やプロジェクトの経済性計算があります。管理会計からいえば、この経済性計算の延長線上に企業価値評価論がでてくるのです。
 企業価値の評価に際しては、そもそも将来見通しをどう見積もるか、競争優位を将来も維持できるのか、リスクとしてそのようなものがあるのか、当該リスクへの対処法をどうするのかなどについて十分に考えることが求められます。そこでは、当然ではありますが、財務指標だけではなく、非財務指標を含めて考えていく必要があるのです。

 実際の企業価値の評価はもちろん簡単ではないようです。そこに様々なパワーによる様々な駆け引きがあることは十分に想像ができるところです。一筋縄ではいかない側面があることは否定できません。計算手法を適用しさえすればよいというものではないのです。

 実際の企業価値評価は知的格闘技であるともいわれます。この知的格闘技においては、法律学、経済学、経営学、ファイナンス論、財務会計論に加えて、管理会計論もその道具の一つとして用いられるのです。