管理会計手法の大小

 前々回と前回で戦略と業務の話をしました。今回は、この戦略と業務が連結できることについて話をしたいと思います。

 一般に管理会計というと、会計メカニズムの中での損益分岐点分析や原価計算などをイメージする方が多いと思います。簿記論から会計をみると、このように感じられる方が多いかもしれません。また、様々な経営管理(管理会計)手法(以下、経営管理手法といいます)を単体でバラバラと思い出す方もいるでしょう。多くの場合、管理会計は、経営管理手法論の単なる集合体のようなイメージを持たれるようです。
 さすがに管理会計のテキストでは、様々な経営管理手法を単に並べるだけでは非常に読みにくいので、どのテキストもまとめ方に様々な工夫を凝らしつつ、経営管理手法を紹介しています。

 経営管理手法において大事なことをひと言でいえば、そこには大きい小さいがあることです。即ち、戦略を表現できるものから、現場業務のマネジメントに適したものまで大小があるのです。このため、これらの手法をつなげることにより、戦略と業務とを連結して考えることができるのです。

 戦略と業務の連結の模様は、滝(Cascade)が流れるさまから、カスケードといわれます。滝にも様々なイメージがあります。華厳の滝のように、滝つぼまで1直線で流れ落ちるものもあれば、多段階で横に拡がりつつ落ちていく滝もありますが、ここでいう滝は後者のイメージです。

 戦略と業務を連結しカスケードにより示すことで、戦略と業務のつながりを可視化することができます。これにより、従業員にとっても、組織がどの方向に行こうとしているのか、各自がそれにどのように役立とうとしているのか、各自が何をすればいいのかなどが分かることになります。
 このような可視化は、従業員とマネジメント層との間で、様々なアイデアや疑問などの活発なコミュニケーションを誘発するでしょう。従業員を一つの方向にまとめていくアラインメント(方向付け)もやりやすくなるでしょう。

 戦略と業務の連結、カスケード、可視化、コミュニケーション、アラインメントなどは、経営管理手法に大小があるからこそできる、管理会計の非常に重要な機能なのです。