行政管理会計における非財務指標と方法論の重要性

今回は、行政管理会計における非財務指標と方法論の重要性について述べます。企業の管理会計においても非財務指標が重要であることは以前に述べました。というのも、財務指標は結果として生まれるものであり、財務指標をコントロールするためにはその前段階の非財務指標をコントロールしなければならないからです。

 行政では、売上に相当する収益がないことが多いので、そうなると、収益から費用を控除して算出される利益もないことになります。しかし、行政組織においては多くの場合(というか、ほとんどの場合といってもいいでしょう)、収益に相当する非財務指標は存在するでしょう。従って、この非財務指標をコントロールするために、その前段階にある(原因ないし手段となる)非財務指標を探し出してきて、これをコントロールすればいいことになります。もちろん、更にさかのぼったところにある非財務指標を考えていく場合もあるでしょう。

 そして、管理会計の考え方である管理会計手法(一般的な言葉使いでは経営管理手法といったほうがイメージしやすいかもしれません)は、こういう場合にはこれをこうしたらどうなるといった方法論を示すものです。この方法論に内在するロジック(因果律)は、財務指標であっても非財務指標であっても実は活用できるものが多いです。なので、財務指標から離れた非財務指標であっても、この方法論が使えることが多いということになります。

繰り返せば、管理会計手法(経営管理手法)は、財務指標から離れ、非財務指標となっても、方法論としては活用可能です。この方法論は、いうなればマネジメントのための思考の補助線と考えてもいいでしょう。

 この思考の補助線としての方法論たる管理会計手法という理解の仕方は、実務においては非常に役立ちます。情報を整理し、必要なものを取り出して再構築していく際には、ヒトは無意識にこれまでの事例や考え方等から似たものを探そうとします。ですから、要点だけでもいいので管理会計手法が事前にアタマに入っていると、混沌とした現実を眺めただけで、マネジメントのためのポイントが自然と発想できるようになります。方法論や手法論なんて…と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、案外バカにしたものでもありません。

 因みに、昔、方法論や手法論を重視する管理会計論は、ドイツ流のアカデミズムの伝統とは相いれないところがあり、このため、ドイツでは管理会計論を受け入れるのに苦労したという話を読んだ記憶があります(この話はいずれ項目を改めてお話しします)。もしかしたら、アカデミズムはこういうものだという先入観が我々にもあるのかもしれません。「役に立つものは使えばいい」的な割り切りもあってもいいのかもしれませんね。

 さて、月日がたつのは早いもので、この月末にはニューヨーク・コロンビアでの滞在を終え、帰国することになりました。コロナを気にしつつも結構忙しくしていた1年弱でしたが、短い時間にもかかわらず、思いのほか成果のあった滞在でもありました。
「日々雑感」については最近、毎週のように更新しておりましたが、しばらくの間、帰国と異動等、イベントが続きますので、1か月程度お休みさせていただきます。

それでは。

マンハッタン・アッパーウェストの寓居にて

Manhattanhenge, 2022年7月11日午後8時20分 ET 撮影:管理人2