行政管理会計の3つの登山口

さて、今回から「行政管理会計の特徴」という項目に入ります。まずはその「位置づけ」からです。

 これまでの拙著に書いたところですが、行政管理会計を考えていく場合、どこから考えるかにより、3つの登山口があります。政策か、会計か、業務かの3つの登山口です。以下、簡潔に言及します。

 「政策の登山口」から入った場合、すぐに問題となるのが、政策評価です。政策評価は、企業における利益のアナロジーとして理解したくなりますが、政策の策定・実行・評価のサイクルには時間がかかり、かつ評価論はそれ自体が難しいことから、行政の執行部局のマネジメントという意味では使いにくいでしょう。
また、「会計の登山口」から入った場合、財務会計的な様式美の世界から入りますので、最初の制度構築はいいのですが、財務指標をコントロールするためには、その前段階にある非財務指標をコントロールしなければならないと考えていくと、だんだんと公会計(財務会計)から離れる必要がでてきます。
最後に、「業務の登山口」です。多くの行政組織ではいずれかの業務を効率化し、余裕を創り込んだ上で、現に必要とされている業務の増加を図るという構図になります。この構図は行政の執行部局のマネジメントそのものですので、行政実務家の感覚にはこれが一番フィットするでしょう。

このことから、拙著では、行政実務家であれば「業務の登山口」から行政管理会計を考えるのが適当であると述べています。

そして、業務のマネジメントにきちんと取り組んだ上で、必要があれば、これを政策評価や公会計に活用していくという流れになると考えます。こうすることにより、政策評価や公会計から導き出された課題について、これらをどう解決していくのかが見えてくることになります。逆にいえば、業務のマネジメントができていないと、政策評価や公会計からだけでは解決のための方策が見えてこないのです。
例えば、政策評価の目標が未達の場合、どこに努力を集中すればいいのかは、業務のマネジメントがしっかりしていなければわかりません。あるいは、公会計によりコストを算出した場合でも、当該コストを減らすために、どこに努力を集中すればいいのかは、業務のマネジメントがしっかりしていなければわかりません。なお、コストを会計的に算出する必要があるかは、そもそも算出には労力がかかることでもあり、その必要性をしっかりと吟味する必要があるでしょう。

大切なことは、業務のマネジメントがしっかりしていなければ、政策評価でも、公会計でも、次の一手を導くことができないということなのです。